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箱根強羅ホテル

箱根強羅ホテル 5月27日 18時30分開演 新国立劇場

    新国立劇場への道

     梅コマのエリザ、宝塚エリザ、帝劇レミゼ……と、ミュージカルが続いていたのですが、いよいよストプレ初体験の機会がやってきました。ストプレのイメージ、今までは正直言って、あまり良いイメージはなかったんですよね^^; 「突然客席の方を向いて妙に自己主張するのは何で?」「手足の動きが不自然に強調される必要はあるの?」みたいな感じで。
     でも、内野さんに♥ して以来、舞台の上の内野さんを観てみたいと思っていたんです。何せ、文学座所属の確かな演技力を持つ素晴らしい役者さんですから。ただ、昨年の「モンテ・クリスト伯」の凄まじいチケット争奪戦の話を聞いていたので、行けるかどうか心配していたんですけど……
    なんとなんと!!ファンクラブ発足ではありませんか〜o(≧∇≦o)(o≧∇≦)o しかも、今入会すれば「箱根強羅ホテル」の優先予約ができるとのこと。もちろん、すぐに申し込みましたよん♪ 希望日も思いっきり平日マチネ……嬉しすぎて仕事のことは吹っ飛んでた?!おかげでチケットは無事にゲット〜〜しかもダメ元で電話をかけた別の優先販売までゲットできちゃって……こんなにのんびりチケットを取れたなんて、ホント、ファンクラブ様サマでした

    ストプレ初体験!

     観劇当日、私は朝からウキウキ、ルンルン♪ だって、梅コマ以来、半年振りのナマ内野さんですよぉ〜〜♥♥♥ 平日だったので昼間は仕事。でも、午後3時の休憩辺りから胸がドキドキ。普通にセリフを喋ってる(爆)内野さんに会えると思うだけで嬉しくて顔がユルユルでした^^;
     終業のチャイムと同時に会社を飛び出して新国立劇場へ……木の雰囲気を前面に出した上品な建物でした。セレブな雰囲気にちょいと圧倒されてしまった小心者の私^^; 中の雰囲気もミュージカルとは違う感じでした。

    【従業員を紹介するところ】
    第1場に変わると同時に舞台の照明が明るくなり、従業員たちが登場!それぞれ怪しくて面白かったんですけど、中でも段田安則さんの近眼芝居に大爆笑。握手しようとして別の人の方を向いたり、つまずいて転んだり……しかもちょっと低めの声で淡々とした喋り方と絶妙な間が更に笑いを誘ってました。

    山田智恵子役の麻実れいさん、ウオッカの瓶を片手に歌い踊りながら登場!かっこよかったですヽ(^。^)丿 さすが元宝塚の男役トップ!!男役出身の方ってキレが良くてすらっとしたスマートな物腰で……私、かっこいい女性って大好きなんですよね。他には一路真輝さんや天海祐希さんとか……さしずめ女子校でラブレターをもらうような先輩と同じってところかな。

    ロシア人を恐れる従業員たちに「みんな人間よ」という歌を教えるところ、この作品のテーマだと思いました。戦争をしていても、過酷な状況の中でも、国籍が違っても立場が違っても、みんな同じように笑って怒って泣いて、懸命に生きている。溢れ出る人間への愛情を感じる歌で、心に深く残りました。

    最後の登場人物として、内野さん演じる植木職人の国枝が階段の上にある扉から入ってくるんですけど、その瞬間、私の周りの人たちが一斉にオペラグラスを持って内野さんがいる方向にちゅうも〜〜く!!いや〜〜皆さん、お仲間なんですね。かくいう私も…(笑)

    【パジャマの話】
    三人娘たちの「玉砕する前にパジャマを着たい」と騒いだことから従業員全員がパジャマを着ることになったところ。全員が「摩訶不思議なパジャマ」を歌いながら踊ってましたけど、特に内野さん、大はしゃぎで可愛かったですぅ〜〜舞台中を走って踊って魚釣りの真似をして……後から「一番はしゃいでたのはあんただよ」ってつっこまれてましたけど。あの笑顔、たまらないんですよね〜(*^^*)恋愛ドラマで見せるメロメロさせる笑顔とは違う無邪気な笑顔♪笑いながらも心は持ってかれてましたよ(笑)

    パジャマダンスの後、「こんなバカなことをしている場合ではない」と言って沖縄戦の話になるんですけど、みんなが部屋に戻っていって最後に残った坪井が「沖縄戦の話は新聞にも載っていないしラジオでも言っていない」と指摘。この瞬間、思ったんですよね。こいつは何か大物ではないかなぁ〜って。←結局、最後まで“本当の”正体はわからなかったんですけどね。

    【工作員たち】
    内野さんが天井からロープをつたって降りてくるところ、かっこ良かったですぅ〜〜しかも、真下には内野さんに気づかない千恵子と加藤参事官が喋ってて……二人は国枝の身の上について話してるんですけど、その内容に合わせて内野さん演じる国枝が反応してて、それがまた可愛いんですよね〜☆

    軍部から派遣されたスパイさんたちが登場するシーン。暗号歌、大爆笑でしたよ〜〜(>▽<)「お酒は〜♪」「タララン」「ぬるめがいい♪」「タララン」……しばらくは耳に残って離れなかったです。三浦・岡・国枝の3人が嬉しそうに歌う姿が浮かんできて思い出し笑いしてました^^; この場面、客席とオケピの間に3人が出てきて歌うんですけど、最前列にいた人が羨ましかったですよ(^▽^) 間近に内野さんがいるなんてぇぇ〜〜(壊)

    【日本料理をめしあがれ〜湖畔の宿】
    「日本料理をめしあがれ」を歌う中で、麻実さんと梅沢さんが「こっちへいらっしゃい」って感じで客席に手招きされるんですけど、私、最前列に座ってたらいってたかも……(笑) 公演中に実際に行った人っている?(いや、いないですよね^^;)

    軍部スパイの4人がホテル爆破のための段取りを話しているところで、稲葉が「湖畔の宿」で新しい暗号歌を作ろうとする。このメロディ、聞き覚えがある自分が哀しかった…(笑)私はそんな年ではないはずなんだけど^^; で、そこにテルさん登場!「歌う暇があったら仕事をしなっ」「みんなお見通しだよ」(←本当にそうなんですよね……笑)って言うんですけど、女性スパイだと疑った4人は例の暗号歌を歌って確認。そのやりとりがまた笑わせるんですよね〜〜

    【忘れられない光景】
    坪井が智恵子の母親の身の上を話し始めるところ、この時点で私は、みんな怪しいと思っていたので二人の会話の中に大事なカギが隠されていると思って、一言も漏らすまいと必死で聞いていました。おかげで劇を楽しむ余裕がなくなってしまいました^^; それにしても坪井さん、あなたは結局、何者だったんでしょう?ただのスパイ検索官ではないと思うんですけど…

    智恵子が読んだロシア人学校の女生徒の作文、上手すぎ〜〜「弟の顔もゆっくりと遠ざかって行きます。やがてその顔が点になり、とうとうモスクワの朝もやの中に消えて…」なんて!!本当に6年生?ロシア人?ちょっと生意気だと思ってしまった私。でも、この作文を読む内野さんに、私はまたまたメロメロ〜〜

    智恵子と国枝が姉弟だとわかるところで二人が歌う「鬼ヶ島の子守唄」、胸キュンでした。切な〜〜いメロディも素敵だし、麻実さんと内野さんの歌も素敵。内野さん、トート閣下の時の妖艶な歌い方と違って、とっても素朴でカワイイ歌い方。こんな歌い方もされるんだなぁ〜と……もう、見る度に好きになってしまうじゃないですか(^^*)

    【爆発】
    第2幕、智恵子の部屋から軍服姿で内野さん登場!!私も含めて客席のうっちー病患者全員がほれぼれするような溜息と恍惚の視線〜〜明らかに客席の空気が変わってましたよ^^; 二人は日本の未来について言い争うんですけど、「石頭〜〜」って言いながら自分の部屋に走りこむ内野さん、可愛すぎますぅぅ〜〜「砥石頭!!」って反撃する麻実さんとのイキもぴったり。言い争っている内容は、和平vs本土決戦だし、「一億玉砕で日本人の誰にも未来はない」という国枝に、智恵子が「私たちみんなをひと括りにできるの?言いすぎですよ」と、とっても大切なことを言っているんですけど、それを感じさせない軽妙なやりとりに引き込まれてしまいました。

    加藤参事官が聞いているのを知らないで、岡・稲葉・三浦の軍部スパイ3人が本土決戦の作戦について話しているシーン、笑いすぎてお腹が痛くなってしまいました。国枝が「聞かれてる、マズイ、止めろ」って合図を送っているのに気づかない3人。あまりにマヌケすぎて……しかも内野さんも「あちゃ〜〜もうダメだ」みたいに呆れて座り込んじゃうし。極めつけは「われわれの正体はまだバレていない」と稲葉。客席の笑いは最高潮でした(≧∇≦)

    雇った従業員がみんなスパイだとばれて加藤参事官は呆れ気味。気を鎮めましょうと言って「困ったときには」を歌うんですけど、メロディは賛美歌ですね。「いざ歌え、いざ祝え、うれしきこの宵〜♪」のクリスマスソング。でも、歌詞は深い内容でした。「困ったとき、悩んだとき、黙っていよう…(中略)…よく落ち着いて、よく考えて、それから言葉にしよう」これから悩んだ時はこの歌を歌うことにしようかなぁ。

    【大演習】
    演習のシーン、軍部スパイ4人は下手で演技をしていることが多かったので、上手に座っていた私はよく見えなくて(;△;)でした。下手前列の人たちは妙に盛り上がっていましたけど、彼女たちも多分私と一緒の病気だ(笑)間近に内野さんを見られて羨ましかったです。

    軍部や外務省の作戦を振り返るシーン、心に残るセリフばかりでした。智恵子の母の手紙にあった「早く戦争が終わるといいわね。また会えるといいわね。それまできっと生きていてね」や、坪井の「信じることと客観的に分析することとは別物です」等など。でも、一番私の心にズシンときたのは、「誰か偉い人が全世界に向かって負けた、やめたいって叫べばいいんだよ」というテルのセリフ。戦後のエピローグで明らかになるんですけど、加藤参事官が「陛下が全世界に向けて、朕はやめたい、負けましたとおっしゃれば、和平は今すぐ成就します」と外務省上層部に進言して怒らせるんです。そのことで、智恵子が「加藤さんの進言がもし受け入れられていれば、沖縄、広島、長崎、ソ連の満州侵攻はなかった」って言うんですよ。聖断の時期を巡る議論や天皇の戦争責任……ともすれば、重〜〜い、反発も出てくるような内容を笑いの中に入れて表現するなんてニクイなぁと思いましたよ。

    【エピローグ】
    加藤参事官からの手紙で、登場人物たちの消息が明らかになるんですけど、今でも疑問なのが坪井の正体。スパイ検索官ということだったんですけど、手紙では坪井の消息だけがどこをどう調べても分からないとのこと。本当はもっと大物だったんじゃないかと思うんですよね。もしかして和平工作の話の中で出てきた広田弘毅とか……東京裁判でA級戦犯として処刑されるから戦後いないのは当たり前なんですけど、さすがにこれはつじつまが合わない気もするから違いますよね^^; 現代人の視点の象徴として登場させた人物?ソ連との和平工作が無駄なことも見抜いてたし。あ〜〜〜分からない??

    内野さん、学生服姿で出てくるんですけど、軍服を着ていた時の喋り方や表情とは全然違う無邪気な笑顔。すっかりカワイイ弟キャラでした。こんなにいろんな表情を見せてくれる内野さん、なぜそんなに素敵なの〜〜〜また一つ好きになっちゃいました。

     カーテンコールは帝劇のミュージカルみたいに派手ではなかったです。聞いたところでは、ストプレのカテコは劇の余韻を残すために、あまり派手にはしないとのことらしい……この日は3回。出演者全員が舞台に出てきてお辞儀をされてました。あと、オケピに拍手。やっぱり内野さんの素に戻った笑顔は、相変わらず素敵です。出演者は、それぞれ演じた役の部屋に戻っていくんですけど、3回目に内野さんが部屋に入る時に、手だけ出して被っていた学生帽をクルクルって!!ホント、お茶目な内野さん♥♥♥

    いろいろ考えたこと

     今回の劇、笑って笑ってすご〜〜〜く楽しかったんですけど、終わった後にふと切なさが残りました。軍部の本土決戦の作戦、はっきり言ってアホです。マムシ作戦やH弾作戦なんて非現実的なことを“マジメ”にやってるなんて……しかも、その頃の歴史を学んだ私たちにしてみれば、日本がソ連を仲介に和平工作なんて考えた時には、ソ連はヤルタ協定を結んでとっくに日本の敵になっていたわけで……まぁ、B29を撃墜するために竹槍演習なんてやっていた時代ですし、煮詰まっていた日本は敗戦まっしぐらだったんですけど。
     でも一生懸命生きていた人間がいた。そんな人間が可笑しいけど愛おしいんですよ。そして、そんな人間を愛すればその分だけ戦争が憎くてたまらなくなる。戦争は虚しいことでいろんなものを奪うことはあっても得るものは何もないことを心に刻みつけられたように感じました。そんな感情が笑いの後の切なさではなかったのかと思います。

     初めての作品、しかもストプレ初体験&内野さんを夢中で追っかけていた私は、セリフや登場人物の仕草に隠された伏線や表現を楽しむゆとりはありませんでした。2回目はそういう部分を埋めていきたいなと思っています。

    2005年5月29日 記

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