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箱根強羅ホテル

箱根強羅ホテル 5月31日13時開演 新国立劇場

    さすがに2回目

     2回目観劇!同じ作品をリピートするのは初めて。今回は初見の時に見逃した伏線や登場人物の仕草に注目しようというのが課題 (注!頭の回転がトロ〜〜い私のことですから、今回発見したものも大したものではないんですけど。国語は5段階で3の成績でしたし、「お前は小論文が書けないから小論文が入試科目じゃない大学を選べ」と言われた人間ですから)
     前回持っていかなかったオペラグラスもしっかり持参!これで内野さんをしっかりパパラッチ(⌒▽⌒)ただ、これがまずかった!最初に懺悔しますけど、内野さんの表情をアップで見たために脳裏に焼きつけられてしまい、私は卒倒寸前。しかも後日、思い出してはせつな〜〜くなるし。マイオペラグラスを買ったのは間違いだったかも?!

    【従業員を紹介するところ】
    三人娘が智恵子に長刀の話をするところで、テルが“人から聞いた話”と言って「芸者はお座敷の前には手のひらにオカネと書いて舐める、そうするとお座敷がうまくいく」と話すところ。テルさん、実は料亭の女将で財界のスパイ。正体をほのめかすセリフだったんですね。後の「日本料理をめしあがれ」という歌の時に、加藤参事官が「外務省は国内にコネがない」と言ったのに対して「外国とのコネはしっかりつけといてくださいよ」と言う。これって財界が狙っていた戦後の復興景気のことを暗に言っているんだなぁと…

    国枝が登場してからの智恵子の仕草。国枝の方をしきりに見て気になる素振りをしているのを発見。この時から肉親の絆を感じていたのでしょうか?!後のシーンで、国枝の鼻ピンの癖を智恵子もあちこちでやっているんですよね。しかも、同じ事をやる国枝に興味津々……後の展開を知っているから先入観もあるのかもしれませんが、こういう見方もおもしろいかも。

    前回の時は気に留めなかったんですけど、「いい靴は心の友ですよ。嬉しい時は良く弾んで喜びを2倍にしてくれます。悲しい時はそれを和らげて悲しみを半分にしてくれます」という智恵子の母の手紙にあった言葉。実は観劇の数日前、仕事で立て続けにミスをして凹みモードだったんですけど、元気づけられた気がしました。麻実さんの言い方もキレが良くてかっこ良かったし(^▽^)

    【工作員たち】
    2回目観劇!同じ作品をリピートするのは初めて。今回は初見の時に見逃した伏線や登場人物の仕草に注目しようというのが課題 (注!頭の回転がトロ〜〜い私のことですから、今回発見したものも大したものではないんですけど。国語は5段階で3の成績でしたし、「お前は小論文が書けないから小論文が入試科目じゃない大学を選べ」と言われた人間ですから)

    前回持っていかなかったオペラグラスもしっかり持参!これで内野さんをしっかりパパラッチ(⌒▽⌒)ただ、これがまずかった!最初に懺悔しますけど、内野さんの表情をアップで見たために脳裏に焼きつけられてしまい、私は卒倒寸前。しかも後日、思い出してはせつな〜〜くなるし。マイオペラグラスを買ったのは間違いだったかも?!

    加藤参事官と智恵子が外務省の和平工作について内緒話をしているシーン。加藤が喋る内容に合わせてスパイさんたちが次々に登場!正体を知らなくても十分楽しいんですけど、知っていると絶妙なタイミングにニンマリ☆「(外務省の和平工作に反対する)陸軍がスパイを放ってくる。例えば(スパイ養成学校の)中野学校出の刺客とか…」というところで陸軍の岡軍曹が部屋からコソコソ出てくる。「海軍もやってきます」と言うと、海軍の三浦が出てくる。しかも「水、水、水!」といって台所に水を取りに行くんですよ〜〜(≧∇≦)さらに、「憲兵もきますよ」と言った途端、スパイ検索官の坪井が夢遊病者のように部屋から出てきて大混乱!!単純に面白い上に、タイミングの良さも加わって大爆笑でした。

    【忘れられない光景】
    軍部4人のスパイがホテル爆破の作戦を話しているところで、稲葉が新しい暗号歌を考えつくんですけど、それが高峰三枝子の「湖畔の宿」。これを歌い始めると客席がどっと沸いたんですよ。今までも笑いがあったんですけど、明らかに笑いの意味が違った!!この日は平日マチネで、戦争を体験されたであろう世代の方々が多かった。そのため、懐かしさも含んだ笑いだったように感じました。

    国枝がロシア人学校の女生徒の作文を読むシーン、途中で息が詰まったと言って先が読めなくなるんですけど、きっと弟と姉の別れの話だったので、何かに感づいたんでしょうね。

    智恵子と国枝が「鬼ヶ島の子守唄」を歌う場面。実は、前回の観劇の後、ネットで、あのシーンで内野さんが泣いていたという書き込みを見つけて、これは次に行った時に絶対に注目しなければ!と思っていたんですよ。それで、オペラグラスでズームアップ!!涙は流されていませんでしたけど、目がウルウルしてる〜〜〜〜しかも、置いてきぼりにされた子犬のような表情!!目を離せなくなりましたよ。しかも音楽も切な〜〜〜い旋律だし。胸キュンどころじゃなかったんですよぉぉ!!国枝の生きてきた人生が滲み出ているようで……内野さんの目ウルウルや泣きシーン、ダメなんですよ。心わしづかみですから

    ただ、このシーンで「軍部と外務省が巡り合ってどうする?」と岡、「ひどく合いの手の入れにくい歌だ」と稲葉。笑わせてくれるのはいいんですけど……今回ばかりはちょいと邪魔!!内野さんの数少ないシリアスな演技、堪能させてよぉぉぉ〜〜

    【爆発】
    岡・稲葉・三浦の軍部スパイ3人が本土決戦の作戦について話しているシーン、マムシ作戦やH弾作戦のことを話している時の客席の笑い、しみじみとした笑いでした。前回はソワレで若い人(絶対内野さん目当ての人が多かったと思う!)が多かったので、華やいだ笑いが多かった。でも、今回はその時代を実体験として知っている上で笑い飛ばしているように感じました。ちょっぴり甘酸っぱくて哀しくて切ない笑い。

    【大演習】
    今回は下手側の席だったので演習のシーンがよく見えました(^▽^)内野さんが大砲に点火する仕草、すっごくリアルなパントマイムっぽい動き。でも手が妙にセクシーと思うのは気のせい?(手フェチなもので……^^;)軍部や外務省の作戦とホテルでの二日間を振り返るシーン、やはり考えさせられること満載でした。加藤が言った「外務省の和平派と軍部の本土決戦派との“見えない戦争”だった」というセリフってまさに当時の日本の状況を表した言葉ではなかったのかなと思いました。しかもどちらにも勝ち負けはなかった……その上、坪井がモスクワルートを使った和平への疑念を呟く。「客観的な事実と信じることは別物だ」と言ってますけど、国体の維持を目指して和平に奔走した人、本土決戦に突き進んだ人、国内の反体制派の取締りをしながらも冷静かつ的確に国際情勢を見据えていた人……今までの笑いが一気に切なさを帯びてきたように感じました。あと、テルが江戸っ子張りの啖呵で「ガダルカナル、サイパン…と負けっぱなしじゃないか。偉そうなことをいうんじゃないよ」「大本営はでまかせ!」「だれか偉い人が負けた、やめたいって言えばいいんだよ」というところ。敢えて庶民、しかも料亭の女将という立場の人に言わせたところが、凄い!と思ったし心に響きました。軍人や官僚などの“エリート”ではないところがポイントだと思います。さらに、智恵子が自分が住んでいた町内のことを話し、3月10日の東京大空襲で大切な人たちを失ったことを国枝に言った時に「いのちを吹き消したのは誰でしょうね。偉い人たちなのか、それとも私たちなのか…」って。誰が戦争を起こしたのか、誰に責任があるのか……難しい問題をサラリと提起しているところが、押し付けがましくなくて、でも、心に何かを残す。奥深い脚本です。

    和平派と決戦派が話し合っていく中で、客観的に日本が置かれた状況が明らかになっていくんですけど、この時の内野さんの表情がいいんですよ!!ほとんどセリフはないんですけど、下手の壁にもたれかかって帽子を取って黙って聞いてて……その表情がどんどん変化してくる。最初は「和平が何だっ!」っていう挑戦的な感じなんですけど、本土決戦作戦が無意味なこと、ソ連に仲介してもらう和平工作も手詰まりという危機的状況を確信するにつれて「何てことだ」「自分の信じた道は何だったんだ」「どうしたらいいんだ」という表情に変わっていく!!国枝の苦悩が伝わってきて、こっちまで胸が苦しくなってきました。普通なら、中心で喋っている加藤参事官やテルの方を注目しているんでしょうけど。でも、他の出演者の方も魅力的な人ばかりだったのでいろんなところを意識しないといけなかったので大変でした

    智恵子と国枝の絡みも良かったです。他のスパイさんたちとホテルを去る国枝に「姉さん、ずっとここにいますからね」と言う。引き止めるでもなく、かといって突き放すわけでもなく……多分智恵子の中では行かせたくない気持ちもあったと思うし、弟の生き方を尊重したい気持ちもあったと思うし、複雑だったと思います。さっぱりした別れ方がかえって二人の絆を強く描いているように感じました。

    で、ここでも内野さんの演技がいいんですよ♥♥♥(何だか、自分の妄想が膨らんで壊れてる気もしますけど、そこの所はお許しを…^^;)出て行く前に二人で「鬼ヶ島の子守唄」を歌うんですけど、やっぱり内野さんの目がウルウル……こっちは胸キュン^^; すっかり姉と弟の雰囲気になっていて、弟キャラでちょいと甘えてる感じで。そんな雰囲気を壊すように稲葉が出発を促す。その時に、内野さんの雰囲気が一瞬にして変わるんですよ!軍人の厳しい顔に戻る!!この一瞬の変化がまたまた切なくて……

    【エピローグ】
    やっぱり坪井検索官の正体、分からなかった〜〜〜(_ _,)/~~ 某掲示板ではソ連の二重スパイだったとか、天皇だったとかいう話も出ているんですけど。今月発売の雑誌「すばる」に脚本が書き下ろされているんですけど、それを読んでもやっぱり分からなくて。井上せんせ〜〜い、やっぱり秘密ですかぁぁ??気になりますぅ〜〜

     今回もカテコは3回。内容は前回と同じ内容でした。後半の公演に行った人たちの報告によると、内野さんが最後に国枝の癖の鼻ピンをやってくれたらしいんですよね。やっぱりお茶目な内野さん♥ 私も見たかったなぁ〜〜

    足りない頭で、でも一生懸命考えた

     前回この劇を見てから、戦争についてずっと考えていたんですけど、2回目を見て「戦争って何だろう」ってさらに心に刻みつけられたように思いました。マムシ作戦やH弾作戦は、はっきりいってアホですよ。でも、外務省の和平工作も今となっては笑える。ソ連は1943年のテヘラン会談でノルマンディー上陸作戦とドイツ降伏後の対日参戦を約束しているし、1945年のヤルタ会談では対日参戦の密約を結んでいる。敵であるはずのソ連をあてにするなんて滑稽以外の何物でもない。
     でも、ばかばかしいと切り捨てることはできなかった。一生懸命になっている人間一人ひとりが何とも愛おしかったんですよ。そして、愛おしさを感じれば感じるほど戦争の虚しさを感じました。智恵子の教えた「みんな人間よ」の歌にもあるように、同じ体を持ち、喜怒哀楽の感情を持つ同じ人間……そんな人間が憎みあい殺しあう戦争。戦時非常体制という究極の状況にありながら、この劇に出てきた人たちのように、使命に燃える人、青春を謳歌する人、自分の生き方を貫く人など様々。こんな人たちを奪う戦争は率直に嫌だと感じました。外交云々の理屈ではなくて。
     劇中のセリフで歴史・政治的に痛いトコロをついてるなぁ〜と思うところがありましたが、真面目に取り上げると重すぎるんですよね。それを笑いとばしながらも心に何かを刻む井上作品。新聞の劇評に「静かな反戦劇」とありましたけど、まさにそうだと思います。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」という井上さんの言葉そのものを示す作品でした。

    2005年6月11日 記

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